『世界の中心で、愛をさけぶ』 片山恭一 著
を読みました。
一度目は軽く目を通した位だったのですが、今日は腰を据えて読んでみました。
文章表現があまり上手ではないと最初に読んだ時に感じました。
おまけに内容も手の込んだものでないので、
柴崎コウが「泣きながらいっきに読んだ」
は信じられませんでした。
S君とこの前飲んだときに「この本を読もうかと思ってる」
ときいてもう一度読み直すことにしたんです。
びっくり意外にも感動しました。
読んでない人に申し訳ないのですが、主人公の彼女が死ぬんですよ。
僕がすごいと思ったのは、主人公の心の表現がただ感情(うれしい、かなしいとか)を書くのでなく、事実をたんたんと書いているのに、それだけでどうしようもない絶望ともどかしさが伝わってくるところです。文章ひとつひとつには感動しないんですが、短い文で連続してだされるとたまりません。石がひとつだと何も使えませんが、それが沢山重なるとピラミッドになる、城壁になる。そんな感じです。
最後の方は直接的感情表現がのっていますが、何かすっとはいってくるんです。
設定が高校生ってこともあると思うんですが、嫌味がなく、くどくなく。
今まで他の本や漫画で
・死んだ人は生きている人の心の中で生きていく
・誰かが死んで泣くのは、その人が可哀想だから泣くのでなく、その人を失った自分が可哀想だから泣く
・昔の思い出(死んだ人)は自分のなかで、良い思い出(人)に変わっていく
使い古された考え方です。だけど何か新しい考えのように感じました。
一番気に入った文で、
「人生には実現することとしないことがある」
「実現したことを、人はすぐに忘れてしまう。ところが実現しなかったことを、わしらはいつまでも大切に胸のなかで育んでいく。(中略)人生の美しさというものは、実現しなかったことにたいする思いによって、担われているんじゃないだろうか」
おじいさんの言葉です。
もし読んでみようという人は、一気に静かなところで読むのをお勧めします。
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